【伝統工芸】インスタに何を投稿すれば
いいかわからない職人さんへ。
ネタは作業台の上に
すでにあった。
「何を投稿すればいいか、わからないんですよね」
伝統工芸の職人さんと話すと、SNSの話題になったとき、ほぼ必ずこの言葉が出てきます。手は動いている。仕事は続けている。でも発信だけが、どうしても前に進まない。
私はこれまで複数の職人さんの発信・集客の支援をしてきましたが、「ネタがない」と言う方は、実はネタに困っていないことがほとんどでした。困っていたのは別のことです。
「何を投稿していいかわからない」の正体
多くの職人さんに共通しているのは、「完成品の写真を撮らないと投稿できない」という思い込みです。
完成品は確かに美しい。でも、完成するまでには時間がかかる。毎日投稿できるわけじゃない。だから詰まる——という構造です。
もう一つあります。「宣伝っぽくなるのが嫌だ」という感覚。これは特に40代以上の職人さんに多い。自分の仕事を「売り込む」ことへの、ある種の照れや抵抗感です。この二つが重なると、スマホを開いても何も投稿できないまま閉じる、という日が続きます。
伝統工芸は、SNS発信の宝庫だと私は思っている
ここで少し視点を変えてみます。
工場見学って、楽しいですよね。普段見られない場所、普段知らないプロセス。それだけで人は引きつけられる。伝統工芸の現場は、それが毎日起きています。
木目込み人形を例に挙げると——布を溝に押し込んでいく「木目込み」という技法を、知っている人はほとんどいません。「なぜその布を選ぶのか」「溝の深さで何が変わるのか」「失敗するとどうなるのか」。職人にとっては当たり前のことが、外から見ると全部コンテンツです。
SNSで反応が取れる職人さんの投稿を見ると、完成品よりも「途中のもの」や「失敗したもの」の方がエンゲージメントが高い傾向があります。理由はシンプルで、物語があるからです。
今日から使える投稿ネタ3つ
うまくいかなかったことを正直に書くと、意外なほど反応があります。完璧に見える職人も悩むんだ、という発見が、読む人の共感を引き出します。
投稿例「今日は布の張り具合がどうしても決まらなかった。明日また試す。」
解決していなくていい。完璧じゃなくていい。「続きが気になる」という感覚を残すことが大事です。
道具や素材には、職人の時間が宿っています。道具を主役にすると、自分のことを語らずに自分のことが伝わります。
投稿例「この布、仕入れ先が廃業してもう手に入らない。残りわずか。」
写真一枚にこの一文。それだけで、積み重ねてきた年数と、仕事への姿勢が伝わります。フォロワーが少なくても、こういう投稿は保存・シェアされやすい。
「天颯」「宝輝」「出世童子」——商品名一つひとつに意味があるはずです。その由来を語ると、購入を検討している人の「これにしよう」という決め手になることがあります。
投稿例「『天颯』という名前には、〇〇という意味を込めました。」
宣伝ゼロで、ブランドへの共感が積み上がる投稿です。
「記録する」と考えると、続く
「発信しなきゃ」と思うから詰まります。「今日あったことを残す」と考えると、急に書けるようになる職人さんが多い。
投稿文は一行でかまいません。写真一枚に短い一文。宣伝じゃなくて記録。その積み重ねが、検索されたときに「この人、ちゃんと仕事してる」という信頼になります。
SNSのアルゴリズムは、頻度と継続性を評価します。完璧な投稿を月2回より、短くてもいい投稿を週3回の方が、長期的には露出が増えます。「記録」という感覚は、発信を続けるための心理的なコツであると同時に、実は理にかなった戦略でもあります。
まとめ
- 「何を投稿すればいいかわからない」は、ネタ不足ではなく切り口の問題
- 伝統工芸の現場は、知らない人にとって「工場見学」と同じ価値がある
- 失敗・道具・名前の由来——完成品以外に、ネタは山ほどある
- 「発信」ではなく「記録」と捉えると自然と続けられる

