「うちにニュースなんてない」と思っている経営者へ ―― 地方の小さなお寺が、毎日新聞の一面に載れた理由

全国紙の一面掲載をテーマにしたブログ記事のOGP画像。毎日新聞夕刊の紙面を背景に、「"載るネタがない"は誤解」「地方の小さなお寺が、全国紙の一面に載れた理由」と表示された、広報・PR・メディア掲載に関するサムネイル。

プレスリリースを書いて、配信して、それきり。

何の連絡も来ない。電話も鳴らない。「やっぱり、うちみたいな会社が新聞やテレビに載るなんて無理なんだ」――そう結論づけて、広報そのものをあきらめてしまう。中小企業の現場で、本当によく見かける光景です。

でも、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。

メディアに載るかどうかを分けているのは、多くの人が思っているような「ネタの派手さ」ではありません。もっと地味で、もっと再現性のある別のものです。

この記事では、東京・大田区にある小さなお寺が、墓じまいという一見ローカルな話題で毎日新聞全国版の一面に載った実例を入り口に、その「別のもの」の正体をお話しします。広報の予算がない会社でも、明日から考え方を変えられる内容です。

終活の課題を解決する本寿院のお骨仏様の記事。朝日新聞の一面に掲載された

目次

なぜ、悪くないネタを送っても載らないのか

プレスリリースが取り上げられないとき、私たちはつい「ネタが弱かったのかな」と考えます。だから次は、もっと珍しいこと、もっと数字の大きいことを探そうとする。

ここに、最初のすれ違いがあります。

新聞記者やテレビのディレクターは、「珍しい話」を探しているわけではありません。彼らが探しているのは、**「いま、社会が気にしていることに、ぴたりと接続された話」**です。

どれだけ自社にとって誇らしい取り組みでも、読者・視聴者の関心とつながっていなければ、記者は紙面に置く理由を持てません。逆に、ごくありふれた取り組みでも、社会の関心という補助線が引かれた瞬間に、それは「いま伝える意味のあるニュース」に変わります。

つまり、載らない原因の多くは、ネタの質ではなく、ネタと社会のあいだに橋がかかっていないことにあります。

載る会社がやっていたのは、「すごい話づくり」ではなく「翻訳」だった

具体例で見たほうが早いと思います。

私たちが広報をお手伝いした、大田区の本寿院というお寺の話です。

このお寺には、3000人以上の方の遺骨を胎内に納めた阿弥陀如来像「お骨仏様(おこつぼとけさま)」がありました。関東では珍しい供養のかたちです。けれど、ご本人たちにとっては長年そこにある「当たり前の風景」で、その現代的な価値が社会に伝わりきっていませんでした。

ここで、もし「珍しい仏像があります」とだけ発信していたら、おそらく一面には届かなかったと思います。

私たちがやったのは、この価値をいまの社会の関心ごとに翻訳することでした。

着目したのは「墓じまい」です。継承者の不在や維持費の負担から、墓じまいは2022年度に15万件を超えるまでに増えています。「お墓を手放したいけれど、手を合わせる対象まで失いたくはない」――そんな、行き場のない気持ちを抱えた人が大勢いる。

本寿院のお骨仏様は、3万円から、まさにその気持ちに応えられる供養のかたちでした。

「珍しい仏像」を、「墓じまい時代の、新しい弔いのかたち」と言い換える。題材は何ひとつ変えていません。変えたのは、社会のどの関心に接続するか、という一点だけです。これが、記者が紙面を割く理由になりました。

あなたの会社で再現するための、3つの問い

本寿院の事例は、お寺だから特別だったわけではありません。やったことは、どんな業種にも置き換えられます。次の3つの問いに答えるところから始めてみてください。

問い1:社内で「当たり前」になっている価値は何か

長く続けてきたこと、毎日やっている工程、誰も褒めてくれない地道な仕事。内部では当たり前すぎて誰も口にしないことの中に、外から見たら驚かれる価値が眠っていることがほとんどです。まずはそれを書き出します。

問い2:いま、社会は何を気にしているか

時事のニュース、増えている悩み、新しく出た統計。本寿院でいう「墓じまい15万件」にあたるものです。自社の業界の周辺で、世の中の関心が向いているテーマを探します。

問い3:その2つを、一文でつなげるとどうなるか

問い1と問い2を、「だからこの取り組みは、いまの社会にとって意味がある」という一文で結びます。この一文が、プレスリリースのいちばん上に置くべきリードになります。

派手な発明はいりません。自社の足元にある価値を、社会の関心という言葉に翻訳する。やることは、これだけです。

「配信して終わり」が、いちばんもったいない

もうひとつ、見落とされがちな本質があります。

本寿院の広報では、約200媒体へプレスリリースを配信しました。けれど、一面掲載という結果を引き寄せたのは、その一斉配信そのものではありません。

効いたのは、一人ひとりの記者への個別アプローチでした。

このニュースを必要としそうな記者や番組の窓口を一つずつ調べ、直接メッセージを送る。過去に住職が築いていた記者とのご縁を思い出し、「いま、この情報が役に立つはずです」と、適切なタイミングで再接続する。地味で、手間がかかる作業です。

でも、メディア掲載を分けるのは、配信数の多さではなく、「文脈の合致」と「関係性の温度」でした。100通の一斉送信より、たった1通の「あなたに、いま必要だと思って」のほうが、ずっと遠くまで届きます。

まず、最初の一歩

ここまでをまとめると、メディアに取材される会社がやっていることは、突き詰めれば2つです。

ひとつは、自社の価値を社会の関心に翻訳すること。もうひとつは、その翻訳した一文を、届くべき相手に温度を持って手渡すこと。

特別な才能も、大きな予算もいりません。必要なのは、自社の「当たり前」をもう一度よそ者の目で見つめ直す時間です。

本寿院の広報戦略の舞台裏は、別の記事でさらに詳しく書いています。実際のプレスリリースの切り口や、メディアアプローチの進め方に踏み込んでいますので、自社で動いてみたい方はあわせてお読みください。

関連記事:独自の価値を「社会の関心」へ翻訳する。大田区・本寿院「お骨仏様」の毎日新聞一面掲載にみる広報戦略の舞台裏


自社の「当たり前」の中にある価値を、見つけ直したい方へ

「うちにはニュースになる話なんてない」と感じている会社ほど、実は翻訳されていないだけの価値を抱えていることが少なくありません。

何を、どの社会の関心に接続すれば届くのか。その整理は、外からの視点があるほうがずっと早く進みます。

まずは現状の課題を棚卸しする「ブランド診断」から、ご一緒に始めてみませんか。

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